□琺瑯あれこれ□
ここでは、琺瑯のことばの意味や技術発祥など、琺瑯にまつわる「小話」をまとめました。

■琺瑯ってどんな技術なの?

琺瑯といったとき、普通に頭に浮かぶのは、まず「台所用品」ではないでしょうか。 夜更かしをした夜、琺瑯のミルクパンで沸かしたミルクで温まったり・・・。 金属のおなべで沸かすよりも、やさしい味がするのはなぜでしょうか。

では琺瑯って、どんな材料で、どうやって作られているのでしょう?
実は、琺瑯は、エナメル質(ガラス質の釉薬)を鉄などの金属に焼き付けたものです。 ミルクに金属のにおいがうつらないのは、ガラス質で覆われているからなのです。 ちなみに、銅や銀にエナメル質を焼き付けたものは、七宝(焼)になります。

琺瑯と七宝は、兄弟のような関係で基本の技術はよく似ています。
(実際の琺瑯の加工工程では、下地の鉄とエナメル質をつなぐ役割の釉薬を焼きつける作業があり、 釉薬も琺瑯用に調合されたものを使います。七宝焼のように銅・銀の素材に直接上絵の釉薬をのせて焼くことはなく、 制作作業の内容は異なります。)
↑上に戻る

■琺瑯の技術はどこでうまれたの?

琺瑯技術の発祥の地は定かではありませんが、 紀元前に金や金銀の合金に琺瑯加工が行われていたことが確認されています。 現存する最古の発掘品はエーゲ海のミコノス島から出土したもので、紀元前1425年頃のものと推定されています。 ミコノス島から東はキプロス島、西はギリシャ本土へ二手に分かれ、さらに中東から中国、 またはフランク王国(フランス、ドイツ、イタリア)へと広がっていったと推定されています。 (日本琺瑯工業会発行の「ほうろう技術ガイドブック」より)

琺瑯はその後の製鉄技術や工業生産技術の進歩によって食器などの実用品として発達しました。
↑上に戻る

■琺瑯って呼び名はどこから?

琺瑯は、他の輸入品と同様、中国を経て日本に渡来したと考えられています。

では、中国語の“琺瑯”はどのような成り立ちなのでしょうか。 中国語の“琺瑯”はペルシャ語のfarangに由来するといいますが、 “琺瑯”ということばが、発祥の地から日本に来るまでにどのように変化していったのか定説はありません。

一説に、「琺瑯という言葉は七宝質という意味で、梵語で七宝質のことを払菻嵌といい、 それが「払菻嵌→払菻→発藍→仏郎嵌→法郎→琺瑯」のようにかわったというものがあります (森盛一氏の書籍「琺瑯工業」中の説)。

“琺瑯”の漢字は日本ではどちらも常用漢字ではなく、 現在この組み合わせ以外で使われることはほとんどありません。 手元にある漢和辞典(明治書院 新釈漢和)には“琺”は掲載されていませんし、 “瑯”は“琅”の俗字となっています。 “琅琅”は“金属や玉が触れ合ってなる音”や“鳥のさえずり”を意味します。

個人的な解釈ですが、 外来語の発音に、「玉のように美しいもの」という意味を当てはめたのかもしれません。
↑上に戻る

■琺瑯って、他の国の言葉でいうと?

琺瑯は、英語では、enamel(エナメル)、 ドイツではEmail、Emailleといいます。 私が琺瑯の技法の勉強をしたドイツでは、 琺瑯をdas Industrieemail(またはdie Industrieemaille 発音はインドゥストゥリーエマーユ die Industrie:工業)、 七宝焼に当たるものをdas Schmukemail(der Schmuck シュムック:飾り、装飾(日本の宝飾・ジュエリーにも当たる)) と呼びわける場合もあります。

すこしドイツ語に立ち入りますが、 Email、Emailleはドイツ語の語源辞典によると “Schmelzueberzug(エナメル質の被膜)”とあります。 この単語は、18世紀のフランスにあった、金銀などの金属にガラス質の釉を焼きつける装飾工芸の細密画の技術と一緒に、 専門用語としてドイツ語に借用されました。 外来語であるためか、das Email、die Emaille(エマイ、エマイユ)とどちらも使いますが、 意味は同じです。
↑上に戻る

*参考*(広辞苑より)

琺瑯:
(enamel)金属の素地、おもに鉄器などに、うわぐすりを塗って焼き、 ガラス質に変えて、これで表面をおおったもの。防錆・装飾などを目的とする。 うわぐすりの成分は珪石・長石・硼砂・粘土・蛍石・酸化錫・炭酸ナトリウムなど。 装飾品では七宝焼がある。琺瑯引。瀬戸引。エナメル引。

七宝焼:
(七宝(金・銀・瑠璃(るり)・玻璃(はり)・しゃこ・珊瑚(さんご)・めのう)をちりばめたように美しい焼物の意)
金属などにガラス質の釉を焼きつける、装飾工芸のひとつ。 銅のほか金・銀・青銅などの表面にくぼみをつくり、 そこに酸化鉛・酸化コバルトなどを含む種々の色のエナメルを埋め、 熱して溶着させ、花鳥・人物など種々の模様を表し出す技法。 模様の輪郭に針金を用いたものと用いないものとがあり、 前者を有線七宝、後者を無線七宝という。 中国で琺瑯、西洋でエマーユ(エナメル)という。

エナメル:
金属器具・陶器・ガラス器などの表面に焼き付ける着色・被膜の総称。 普通には琺瑯のこと。 エナメルペイントの略。
(*ちなみにエナメルペイントはワニスと顔料を混合した塗料を指します。 その塗料の膜は光沢や硬さが優れていますが、 琺瑯のように高温で釉薬を焼きつけるものとは異なります。)
↑上に戻る

SIRUP home